和を乱せば、死。獲物を侮れば、死。
時は江戸。究極の職業集団「鯨組」が辿る狂おしき運命とは?
何も無いこの地に富をもたらす巨大な生物を、
彼らは敬意を込め「夷(えびす)様」と呼んだ。
網を打つ者。とどめを刺す者──。
おのおのが技を繰り出し集団で鯨に立ち向かう、
世界でもまれな漁法「組織捕鯨」を確立し繁栄する紀伊半島の漁村、太地。
しかし、仲間同士の信頼関係が崩れると即、
死が待ち受ける危険な漁法であるため、村には厳しい掟が存在した。
流れ者。己の生き方に苦悩する者。異端者──。
江戸から明治へ、共同体に生きる人々の劇的な人生を描いた渾身作。